再販制度

再販制度とは 著作物再販制度について レコードの再販制度が必要な理由 音楽用CD等の再販制度は「当面存置」
再販撤廃による作家等への影響 音楽文化懇談会 再販問題の経緯 音楽用CD等の再販制度の弾力運用の状況について

再販制度とは

再販売価格維持制度は、メーカーが小売価格を決定できる制度のことです。独占禁止法では、再販維持行為を自由な価格競争を妨げるものとして禁止していますが、著作物であるレコード・新聞・書籍等は、同法で法定再販物として認められています。それは、著作物では、価格の高低もさることながら、商品の選択の幅を確保し、全国どの地域でも平等かつ手近にその文化を享受できることが、消費者にとって最大の利益と考えられたからです。現在、この再販制度によって、多種多様なレコードや出版物が、全国同一価格で、安定的に消費者のもとに供給されています。

著作物再販制度について

再販制度は1953年に制定され、それ以来、日本国民の生活に密着した流通制度のひとつとして、長い間機能してきました。その一方で、公正取引委員会(以降公取委)では、経済環境や流通形態、消費行動の変化に合わせて、再販制度の見直しを図っています。
その結果、指定再販については、97年3月末で化粧品・医薬品等が指定から外れ、全廃ということになりました。そして、その後「規制緩和」の一環として、著作物の再販制度の見直しが、行政改革委員会、公取委それぞれで検討されました。
その結果として、行革委緩和小委員会が同年12月8日に最終報告書を、翌98年3月31日に公取委は同委内の「政府規制等と競争政策に関する研究会」の提言を受けて、「著作物再販制度の取扱いについて」を公表し、その中では、「~本来的な対応とはいえないものの文化の振興・普及と関係する面もあるとの指摘もあり、これを廃止した場合の影響について配慮と検討を行う必要があると考えられる。したがって、この点も含め著作物再販制度について引き続き検討を行うこととし、一定期間終了後に制度自体の存廃についての結論を得るのが適当であると考えられる。」としました。
そして現在は98年3月31日の文面にある通り「さらに、公正かつ自由な競争の確保・促進を図る観点から、関係業界においての共同再販行為、不公正な取引方法等が行われた場合には、厳正に対処する」との見解に則り、当協会会員会社は時限再版の見直し等、各会員会社毎の対応を行ってきました。
その結果、2001年3月23日公取委は「著作権再版制度の取扱いについて」を公表し、その中で「現段階において独占禁止法の改正に向けた措置を講じて著作物再版制度を廃止することは行わず、当面同制度を存置することが相当であると考える。」との結論を出しました。

レコードの再販制度が必要な理由

レコードの再販制度は、世界最大の音楽財産を消費者に提供している

日本のレコード産業は、再販制度のもと、日本の大衆音楽、伝統芸能から世界各国の最新音楽、民族音楽まで世界で最も多くの音楽作品を消費者に提供し、消費者の多種多様な文化的欲求に応え、文化水準の維持向上に努めてきました。今や、全世界でも日本でしか入手できない音楽作品も珍しくありません。

レコードの再販制度撤廃は、文化の地域格差を拡大する

レコードの再販制度が撤廃されると、他の商品で総合的に利益を上げられる大型商業施設でのレコードの安売りや、オトリ廉売により自由競争の限界を超えた過当競争に陥り、レコード店の大多数を占める中小レコード店の多くは廃業を余儀なくされ、消費者にとって手近でレコードを購入する機会を失うことになります。
さらに、地方の消費者ほど不利となり、文化の地域格差に拍車をかけることとなります。

内外に開かれたレコード市場

日本のレコード市場は、内外に開かれた公正な市場です。また、日本のレコード業界は、貸レコード業との共存という厳しい環境下に置かれていますが、一方、消費者は同じレコードを購入してもレンタルで利用してもよく、企業努力により、30年前とほとんど同じ販売価格を保っており、文字通り物価の優等生となっています。

音楽用CD等の再販制度は「当面存置」

公取委「著作物再版制度の取扱いについて」結論公表

音楽用CDや書籍、新聞などの著作物の再販売価格維持制度(再販制度)の存廃について検討してきた公正取引委員会(以下、公取委)は、3月23日、最終報告書「著作物再販制度の取扱いについて」を発表し、「再販制度の廃止には国民的合意が形成されるに至っていない」として、音楽用CD、レコード、音楽用テープ、書籍、雑誌、新聞の6品目すべてについて「当面再販制度を存置することが相当である」と結論付けました。
平成3年以降、公取委において、独占禁止法適用除外制度の見直しの一環として著作物再販制度廃止に関する検討が始まり、これに対しレコード業界は再販制度が廃止されると音楽用CD等の発行企画の多様性が失われるなど文化・公共面で悪影響があるとして、再販制度の存続を訴え議論を重ねてきましたが、「当面存置」という結論で、この存廃議論は一応の終結を見ることになりました。
なお、公取委は、レコード業界に対し、消費者利益向上の観点から、価格設定の多様化、非再販商品の発売、各種割り引き制度の導入などの再販制度の弾力運用を求めていますので、業界として今後も真摯に取組 んでいくことが必要と考えられます。

以下が同公表文の主文です。

著作物再販制度取扱いについて
平成13年3月23日
公正取引委員会
公正取引委員会は、著作物の再販適用除外制度(以下「著作物再販制度」という。)について、規制緩和の推進に関する累次の閣議決定に基づき、独占禁止法適用除外制度の見直しの一環として検討を行ってきた。その中で、平成10年3月に、競争政策の観点からは廃止の方向で検討されるべきものであるが、本来的な対応とはいえないものの文化の振興・普及と関係する面もあるとの指摘があることから、著作物再販制度を廃止した場合の影響も含め引き続き検討し、一定期間経過後に制度自体の存廃について結論を得る旨の見解を公表した。
これに基づき、著作物再販制度を廃止した場合の影響等について関係業界と対話を行うとともに、国民各層から意見を求めるなどして検討を進めてきたところ、このたび、次のとおり結論を得るに至った。
1. 著作物再販制度は、独占禁止法上原則禁止されている再販売価格維持行為に対する適用除外制度であり、 独占禁止法の運用を含む競争政策を所管する公正取引委員会としては、規制改革を推進し、公正かつ自由な 競争を促進することが求められている今日、競争政策の観点からは同制度を廃止し、著作物の流通において競争が促進されるべきであると考える。
しかしながら、国民各層から寄せられた意見をみると、著作物再販制度を廃止すべきとする意見がある反面、 同制度が廃止されると、書籍・雑誌及び音楽用CD等の発行企画の多様性が失われ、また、新聞の戸別配達制 度が衰退し、国民の知る権利を阻害する可能性があるなど、文化・公共面での影響が生じるおそれがあるとし、同制度の廃止に反対する意見も多く、なお同制度の廃止について国民的合意が形成されるに至っていない状況にある。
したがって、現段階において独占禁止法の改正に向けた措置を講じて著作物再販制度を廃止することは行わず、当面同制度を存置することが相当であると考える。

2. 著作物再販制度の下においても、消費者利益の向上につながるような運用も可能であり、関係業界においてこれに向けての取組もみられるが、前記の意見の中には、著作物再販制度が硬直的に運用されているという指摘もある。
このため、公正取引委員会は、現行制度の下で可能な限り運用の弾力化等の取組が進められることによって、消費者利益の向上が図られるよう、関係業界に対し、非再販商品の発行・流通の拡大、各種割引制度の導入等による価格設定の多用化等の方策を一層推進することを提案し、その実施を要請する。また、これらの方策が実効を挙げているか否かを検証し、より効果的な方途を検討するなど、著作物の流通についての意見交換をする場として、公正取引委員会、関係事業者、消費者、学識経験者等を構成員とする協議会を設けることとする。
公正取引委員会としては、今後とも著作物再販制度の廃止について国民的合意が得られるよう努力を傾注するとともに、当面存置される同制度が硬直的に運用されて消費者利益が害されることがないよう著作物の取引実態の調査・検証に努めることとする。

3. また、著作物再販制度の対象となる著作物の範囲については、従来から公正取引委員会が解釈・運用してきた6品目(書籍・雑誌、新聞及びレコード盤・音楽用テープ・音楽用CD)に限ることとする。

以下は、公取委結論に対する当協会富塚会長の見解です
平成13年3月23日
音楽用CD、レコード等の著作物再販制度の存廃問題が、3年間の検討期間を経て、このたび公正取引委員会により「当面存置」という結論が出された。
公取委が実施した意見聴取において、一般消費者の98.9%が著作物商品の再販制度存続を希望しているという現実は、全国どこでも同一の本やCDが同一の価格で買える、というこの制度の素晴らしさを享受している 全国の一般消費者は再販制度になんの不都合も不満も感じていないことを示している。公取委の結論は、文字通り民主主義に則った、妥当なものである。
機能を売る商品と異なり、文化の担い手である音楽用CDや書籍などの著作物商品は、本来的に価格競争政策に馴染まない。価格が安定しているからこそ、コンテンツ自体の競争というか切磋琢磨があり、幅広く多様な個性が開花して文化の向上に貢献しうるのである。これこそが真の消費者利益というべきであろう。
一方、著作物商品を送り出す側としては、再販制度に胡座をかくごとき態度があってはならない。それは消費者を裏切ることになる。レコード業界では既に、1)時限再販期間の導入 2)一部非再販指定商品の発売 3)返品・廃盤商品の値引きセール 4)ポイント・カードの実施 など、再販制度の弾力的運用を始めている。何が消費者にとって真の利益かの観点から、これらの施策は今後とも自主的に継続して行く。

再販撤廃による作家等への影響

音楽著作物を収録したレコード、音楽用CD等の再販制度が撤廃され、価格競争の熾烈化によって市場が売れ筋商品に偏る結果、作家、作詞家、作曲家や実演家には、以下の弊害が生じることが予測されます。

作家、実演家への影響
1. 次代を担う新人作家のデビューする機会が失われ、我が国の音楽文化が衰退します。
2. 比較的売上げの少ない純邦楽(民謡・吟詠等)や童謡、クラシック等文化的価値の高いレコードが発売されにくくなり、その結果これらの作家、実演家が減少し、我が国の伝統的音楽文化の荒廃をもたらします。

作家・実演家の共通の主張
1. レコードは文化財であり一般消費財とは異なります。
・ レコードは作家・実演家・製作者等の人格を投影した創作行為の所産であり、その複製物の中身(ソフト)が命です。
・レコードはユーザーが、価格に関係なく、同じ物を複数求めない非代替的な文化商品でもあります。
・著作物は、国の文化のバロメーターを示すものです。規制緩和の名のもとに論議が進められている再販撤廃による競争一辺倒の政策は、上記音楽文化の衰退・荒廃と文化の地域格差をもたらし、最終的には選択幅が縮小することにより、消費者に不利益をもたらします。
・徹底した自由競争によって消費者利益をもたらす一般消費財(物質的な文明用品)と、文化財(精神的な文化商品)とは異なるのです。
2. レコードの再販制度による価格の安定は、作家や実演家の生活を支え、『音楽創造のサイクル』を円滑に循環させています。
3. レコードは書籍等の活字著作物と同じです。
作家が詞や曲をつくり、実演家が吹き込み、世にレコードとして普及しています。一方、書籍は作家が原稿を書き、世に本として普及しています。そこには見かけ上のパッケージの違いがあるだけです。レコードも活字も同じ著作物です。

音楽文化懇談会

1995年11月、レコード・音楽用CD等の再販制度存続のための運動や日本の音楽文化繁栄に寄与する活動を行うことを目的に設立されました。音楽関連10団体で構成されています。音楽文化、芸能文化発展のための社会的、文化的活動、再販制度存続のための運動、著作権思想普及、啓蒙等を中心に活動を行っています。

構成団体・代表者名(敬称略)

一般社団法人 日本音楽著作権協会
公益社団法人 日本芸能実演家団体協議会
・一般社団法人 日本レコード協会
一般社団法人 音楽出版社協会
一般社団法人 日本音楽事業者協会
一般社団法人 音楽制作者連盟
・一般社団法人 日本歌手協会
・一般社団法人 日本音楽作家団体協議会
・日本レコード商業組合
・全国レコード卸同業会

商業用レコードの再販制度存続に関する要望書(要旨)
私達は、以下の理由により、四十年余りの永きにわたり数多くの音楽家を育て、我が国の音楽文化を守ってきたレコード、音楽テープ、音楽用CDの再販制度が引き続き存続されるよう、強く要望します。
1. レコード、音楽テープ、音楽用CDの再販制度は、我が国の音楽文化を守り育ててきました。
1. 音楽用CD等の多様な作品は、それを受け止めるユーザーの厳しい目によって生み出され、音楽文化を守り育ててきました。
2. 世の中には発表される作品数の多さは、可能性を秘めた新人作家・アーティストに対しても幅広く機会を与えることとなり、必然的に、次代を担う新しい才能を育ててきました。
3. 音楽用CD等の商品価格の安定は、作家やアーティストの生活を支え、『音楽創造のリサイクル』を円滑に循環させています。
4. 全国のどこでも同じ価格で音楽用CD等を買うことのできる再販制度は、地域による文化格差の解消に役立っています。
2. レコード、音楽テープ、音楽用CDの再販制度は、消費者にとっても大きなメリットとなっています。音楽用CD等の商品に対し、消費者が真に求めているのは、価格の安さもさることながら、本当に自分の心を満たしてくれるCDを見つけること、そして、それを可能にする音楽作品の幅の広さです。
ちなみに、日本で1年間に発表される音楽作品の種類は、大衆音楽や伝統芸能から、世界各国の最新音楽・民族音楽まで幅が広く、世界最大の音楽市場アメリカの3倍にも上がっています。
3. 安定した日本の音楽マーケットは、海外の作家やアーティストからも高い評価を受けています。
米国レコード協会や国際レコード産業連盟は、再販制度の下、健全な発展を遂げ、世界第2位のマーケットを築くまでになった我が国のレコード業界の現状を高く評価し、我が国の政府関係者に対し、音楽用CD等の再販制度の取扱いについて慎重に配慮するよう求めています。
4. 音楽は若者ばかりでなく、すべての人々にとって、今や生活必需品であり、又、国境を越えて、人々の心の中に受け入れられる重要なコミュニケーションツールとなっています。

このような音楽著作物を、再販制度の検討の場において、新聞、書籍等の活字著作物と差別して取り扱われることのないよう、強く要望します。

再販問題の経緯

1953年 独占禁止法一部改正。新聞、書籍、雑誌、音楽用レコード等の再販 (法定再販)と、公取委の指定により指定再販が認められる。
1990年09月 公取委{規制等と競争政策に関する研究会」(鶴田座長)発足。
1991年07月29日 政府規制等と競争政策に関する研究会が報告書発表。指定再販商品の取り消しとレコード、音楽用テープ、音楽用CDの再販見直しを提言。
1992年04月15日 公取委「適用除外制度の見直しについて」発表。音楽用CDは立法措置でその取扱いが明確にされるまでの間、レコードの準じる旨発表。また、一部指定再販商品の再販指定取り消しと、それ以外の指定再販商品全般の1998年(平成10年)中の見直しを発表。
公取委の要請を受け、レコード業界が、時限再販制度導入。
1994年09月 公取委「再販問題検討小委員会」(金子座長)発足。
1995年03月31日 政府、閣議で、規制緩和推進計画において1998年3月までにすべての指定再販の取り消しと独禁法上の著作物の範囲の明確化を図ることを決定。
1995年04月14日 政府、経済対策閣僚会議で、規制緩和推進計画の期限を1998年3月までに前倒し決定。
1995年07月25日 公取委「再販問題検討小委員会」中間報告を公表。1998年3月末までに独禁法上の著作物の範囲の明確化に関する具体的な結論を出すと発表。
1995年07月27日 行革規制緩和小委(椎名座長)が、規制緩和に関する論点公開。再販制度の原則廃止を提言。
1995年11月06日 当協会を含む音楽関連10団体による音楽文化懇談会が発足。レコードの再販存続に関する要望書を提出。
1995年12月07日 規制緩和小委、報告書発表。再販制度に関して、独禁法例外措置としての妥当性について引き続き議論する旨発表。
1996年02月22日 音文懇、再販擁護総決起大会開催。
1996年10月09日 公取委、再販問題の検討のため、「政府規制等と競争政策に関する研究会」(鶴田座長)の再開を発表。
1996年12月05日 規制緩和小委、報告書発表。再販問題は先送りに。
1997年03月19日 音楽議員連盟定例総会で「音楽用CDを含む著作物の再販売維持制度の撤廃に反対する再決議」採択。
1997年05月14日 文部省・文化庁、業界団体と「音楽文化協議会」を設立し第1回会合を開催。業界11団体代表が出席。
1997年11月17日 著作権の再販撤廃に反対する総決起集会開催。
1997年12月02日 音楽議員連盟が臨時総会にて、「音楽用CD等「著作物の再販売価格維持制度」の撤廃に反対する特別決議」採択。
1998年03月20日 音楽文化振興議員懇談会が緊急集会にて「音楽著作物の再販制度維持を求める緊急決議」を採択。
1998年03月31日 公取委「著作物再販制度の取扱いについて」公表。継続検討となる。
2001年03月14日 公取委「著作物再販制度の見直しに関する意見照会・意見聴取等の状況について」を公表。再販制度の維持を求める意見の件数は、全体の98.8%であった。
2001年03月23日 公取委、著作物再販制度に関し、「当面存置」との結論を出す。
2001年12月04日 第1回著作物再販協議会、開催。
2002年06月21日 第2回著作物再販協議会、開催。
2003年06月13日 第3回著作物再販協議会、開催。
2004年06月30日 第4回著作物再販協議会、開催。
2004年09月07日 第1回「音楽用CD等の流通に関する懇談会(CD懇)」、開催。
2005年06月16日 第5回著作物再販協議会、開催。
2005年09月28日 第2回「音楽用CD等の流通に関する懇談会(CD懇)」、開催。
2006年06月23日 第6回著作物再販協議会、開催。
2006年09月27日 第3回「音楽用CD等の流通に関する懇談会(CD懇)」、開催。
2007年06月21日 第7回著作物再販協議会、開催。
2008年06月19日 第8回著作物再販協議会、開催。



2024年3月12日

公正取引委員会 御中

一般社団法人 日本レコード協会


音楽用CD等の再販制度の弾力運用の状況について

貴委員会は、「著作物再販制度」について「当面同制度を存置することが相当である」との結論を出され、関係業界に対し、現行制度の下で可能な限り運用の弾力化等の取り組みを進め、消費者利益の向上が図られるよう、非再販商品の発行・流通の拡大、各種割引制度の導入等による価格設定の多様化等の取り組みを要請されました。
これまでレコード業界各社は、レコード盤、音楽用CD、音楽用テープ(以下、「音楽用CD等」という)の再販制度の弾力運用に関して、1992年4月以降自主的かつ前向きに取り組み、市販されるすべての音楽用CD等に発売日から2年間の時限再販制度を完全導入しました。

次いで、1998年3月及び2001年3月に貴委員会より要請された以下6項目、

(1)
時限再販・部分再販等再販制度の運用の弾力化
(2)
各種の割引制度の導入等価格設定の多様化
(3)
再販制度の利用・態様についての発行者の自主性の確保
(4)
サービス券の提供等小売業者の消費者に対する販売促進手段の確保
(5)
通信販売、直販等流通ルートの多様化及びこれに対応した価格設定の多様化
(6)

円滑・合理的な流通を図るための取引関係の明確化・透明化その他取引慣行上の弊害の是正

に関して、長年一貫して積極的に取り組みを進めております。

つきましては、以下に、2023年12月31日時点における著作物再販制度の弾力運用及び流通改善のためのレコード業界の取り組み状況をご報告させて頂きます。
(前回ご報告(2023年3月16日)同様、各社別の主な取り組み状況、及び今後の予定を含みます。)

レコード業界は、音楽用CD等の再販制度について国民から引き続き理解が得られるよう、今後も消費者利益の向上を目指し、音楽用CD等の企画の多様性の確保、流通の合理化などの改善に積極的に取り組んでまいります。

【音楽用CD等の再販制度に関する弾力的な運用と流通改善について】
1.時限再販・部分再販等再販制度の運用の弾力化
(1)時限再販期間の短縮について
レコードメーカー各社は、貴委員会の要請を受け、1998年以降時限再販期間の更なる短縮に取り組み、同年11月以降発売された商品から、いわゆるシングル盤(邦楽、洋楽)及び洋楽アルバムを中心として、それまで発行後2年であった時限再販期間を1年または6ヶ月に短縮している。2023年末現在、当協会会員レコードメーカーのうち90%以上が、洋楽シングル・アルバムの時限再販期間を6ヶ月に設定している。
また、レコード売り上げの多くを占める邦楽アルバムについても、2001年以降多くのレコードメーカーが時限再販期間を1年に短縮したのち、多くが6ヶ月に短縮し、現在も運用を行っている。2023年末現在、邦楽アルバムの時限再販期間を6ヶ月に設定しているレコードメーカーは、約83%である。また、邦楽シングルは約88%のレコードメーカーが時限再販期間を6ヶ月としている。

形態別再販期間別会社数(2023年12月末時点) 単位:件、()内は前年

再販期間 邦楽シングル 邦楽アルバム 洋楽シングル 洋楽アルバム
~6ヶ月 36(36) 34(36) 38(37) 37(37)
1年 5(4) 7(4) 3(3) 4(3)
41(40) 41(40) 41(40) 41(40)

※対象社は当協会正・準会員レコードメーカー41社(2023年12月末現在)

(2)時限再販期間経過後商品の値引き販売について

1998年以降、主要レコード店をはじめ全国レコード販売店において、値引き販売が実施されている。なお、レコードメーカーは、営業施策の一環として販売店と協力し柔軟な対応を行っており、時限再販期間経過後商品の店頭値引き販売は年間を通じて適宜積極的に展開されている。

(3)非再販商品の発売と値引き販売について

非再販商品は、2000年以降、洋楽のポピュラー、クラシック等のアルバムにはじまり、邦楽アルバムについても、2001年以降、各社から順次発売されている。この他に、通販・訪販商品、特販商品、インディーズ商品、WEB専売商品等も非再販商品として毎年数多くのタイトルが発売されている。
2023年の全CD等新譜数は9,603タイトル(2022年9,290タイトル)であったが、このうち、CD+DVD/BD品は1,350タイトル(2022年1,432タイトル)、非再販CD等のタイトル数は1,042タイトル(2022年1,101タイトル)となり、CD+DVD/BD商品および非再販CD等の合計で2,392タイトル(2022年2,533タイトル)と、昨年に引き続き2,000タイトルを超える商品が非再販商品として発売されている。
また、これら非再販商品については、発売時より値引き販売が広く実施されている。
なお、CD+DVD/BD商品はヒット作品でも数多く発売されており、2023年に発売され正味出荷枚数が100万枚を超えた「ミリオン認定作品」はアルバム3タイトル、シングル4タイトルの計7タイトル(2022年:アルバム1タイトル、シングル1タイトル)で、そのうち6タイトルがCD+DVD/BD商品の形態で発売されている。

<2023年ミリオン認定作品>(認定月順)

■アルバム
「Mr.5」King & Prince
「i DO ME」Snow Man
「SEVENTEEN 10th Mini Album「FML」」SEVENTEEN

■シングル
「Life goes on / We are young」King & Prince
「タペストリー / W」Snow Man
「Social Path (feat. LiSA) / Super Bowl -Japanese ver.-」Stray Kids
「Dangerholic」Snow Man
<CD+DVD商品について>
2004年6月30日に開催された第4回著作物再販協議会において、貴委員会から『最近、音楽用CDとDVDビデオなど、再販対象商品と非対象商品がセットで売られるものがみられるが、非対象商品を含めて再販契約の対象とすることは原則として独占禁止法上問題となる。』との指摘を受けた点について、当協会から加盟各社に対し、関係取引先を含めた周知徹底と適切な対処を要請、各社は、当該商品が非再販商品であることを理解し、適切な表示を行っている。
表1.非再販CDの発売タイトル数
タイトル数 累計
2000年※ 31 31
2001年 270 301
2002年 143 444
2003年 85 529
2004年 374 903
2005年 933 1,836
2006年 1,742 3,578
2007年 1,938 5,516
2008年 1,735 7,251
2009年 1,378 8,629
2010年 1,109 9,738
2011年 1,185 10,923
2012年 1,951 12,874
2013年 1,201 14,075
2014年 1,866 15,941
2015年 2,300 18,241
2016年 2,041 20,282
2017年 2,151 22,433
2018年 2,082 24,515
2019年 1,491 26,006
2020年 856 26,862
2021年 1,009 27,871
2022年 1,101 28,972
2023年 1,042 30,014
2000年のみ5~12月、2001年以降は1~12月実績

 

表2.CD+DVD商品の発売タイトル数
タイトル数 累計
2003年 163 163
2004年 589 752
2005年 710 1,462
2006年 1,016 2,478
2007年 1,274 3,752
2008年 1,453 5,205
2009年 1,688 6,893
2010年 1,587 8,480
2011年 1,748 10,228
2012年 2,083 12,311
2013年 2,006 14,317
2014年 2,132 16,449
2015年 1,886 18,355
2016年 1,943 20,278
2017年 1,860 22,138
2018年 1,794 23,932
2019年 1,703 25,635
2020年 1,401 27,036
2021年 1,574 28,610
2022年 1,432 30,042
2023年 1,350 31,392

すべて1~12月実績

 

 

(4)廃盤セールの実施状況(今年度は実施を見送り)
レコード業界は、1992年度から年1回「廃盤セール」を開催し、2001年度からは全国の音楽ファンに応えるため、それまでの会場を使っての即売会方式からインターネットを利用した販売方式に変更し実施していた。しかしながら、近年の廃盤タイトルの減少傾向により、本セールへの出品数の大幅な減少が見込まれたことから、今年度の実施は見送ることとした。
なお、今後の本セール実施については、出品予定数の状況を見極めながら来年度以降も継続して検討を行う。
(5)価格表示方法変更後の状況について
消費者及び関係業界において、商品が非再販となっているか否かを認知しやすくするため、2001年3月以降、時限再販期間や非再販商品として発行する商品の価格の表示方法を変更した。
具体的には、これまでCDの表示に関する業界推奨規格を纏めた日本レコード協会規格「RIS204/オーディオCDの表示事項及び表示方法」では、時限再販期間に関して「再販価格適用期限を発売日の表示に近接した位置に記載する。」と規定していたが、2001年3月19日付けでこれを「再販価格適用期限を定価の表示に近接した位置に記載する。」と改正した。併せて、再販商品と非再販商品の価格表示参考例を例示する改正を行った。(非再販商品の価格表示例は「希望小売価格」「標準価格」等の文言を使用。)
さらに、2003年3月の消費税法改正(2004年4月から施行)で、商品等に価格を表示する場合、消費税も含めた総額を表示することが義務付けられたことにより、同年4月、非再販商品の価格表示参考例を改正し、「希望小売価格」「標準価格」等の文言を使用するのではなく、総額表示に準拠した例示に改めた。
その後、2013年10月に「消費税転嫁対策特別措置法」が施行され、暫定的に税抜価格表示が可能となったことを受け、同規格の再販商品と非再販商品の価格表示参考例を税抜き価格へ変更する部分改正を行い、当協会会員レコードメーカーの音楽用CD等の商品については、2013年12月より順次税抜表示へと移行した。
以後、消費税転嫁対策特別措置法の特例措置終了に伴い、2021年4月1日から総額表示が義務付けられたが、当協会会員レコードメーカーでは新譜商品に関する総額表示移行が問題なく行われ現在、店頭においても特に混乱なく運用されている。同規格における再販商品と非再販商品の価格表示参考例についても総額(税込価格)表示とする部分改正が行われた。

 

2.各種割引制度の導入等価格設定の多様化
(1) 各レコードメーカーは、販売施策の一環として、販売店が大量一括購入する場合等における価格設定(リベートを含む)の多様化に従来から取り組んでおり、販売店におけるプライスオフセールやシーズンオフセール等の消費者サービスに積極的に協力している。
(2)

各レコードメーカーは音楽用CD等の低価格化、高付加価値化等価格の多様化に積極的に取り組んでいる。また、DVDビデオやブルーレイディスク付きのCDが多く発売されている。
その結果、設定価格は多様化しており、期間限定の低価格商品、小売店とのタイアップによる低価格商品、複数枚組で価格据え置きなど割安感のある商品、シングルでは500円前後の低価格商品、アルバムではジャズ・クラシックを中心に、国内盤仕様の洋楽CDが1,500円前後で数多く発売されるなど、多種多様な価格設定が継続して行われている。
また、指定枚数購入で割引、オンライン限定の割引など、値下げに相当する様々なキャンペーンも実施されている。
なお、2023年のアルバムの年間平均小売価格は、2,286円と昨年の2,310円から僅かながら低下した。

(注)生産金額(一般市販)÷仕切率73%÷数量+消費税
消費税は1997年4月から3→5%、2014年4月から5→8%、2019年10月から8→10%

(3) 各レコードメーカーは、音楽文化の発展・育成に協力していると考えられる公立図書館、学校等が時限再販期間内の音楽用CD等を購入する場合、販売店が独自の価格設定もできるよう対応している。

3.再販制度の利用・態様についての発行者の自主性の確保

再販制度の利用については、従来からレコードメーカー各社が自らの判断で決定しており、今後も同様である。

4.サービス券の提供等消費者に対する販売促進手段の確保

販売店は1979年の貴委員会の指導もあって、サービス券・ポイントカード等の利用を値引きという考えではなく、消費者サービスの一環として実施していた。その後貴委員会は「サービス券等は景品ではなく値引き」との見解を出されたが、レコードメーカーは、既に消費者へのサービス提供の手段として定着しているとして販売店の自主性を尊重している。
また、他業種とのポイントカードの相乗り等も進んでおり、利便性も更に向上している。

5.通信販売・直販等流通ルートの多様化及びこれに対応した価格設定の多様化

レコードメーカーは、従来から消費者の購入利便性の向上のため、インターネット、テレビ、新聞、雑誌等、通販・直販等流通ルートの多様化に積極的に取り組んでおり、商品特性に合わせた多様な価格設定を行っている。

(1) インターネット利用による音楽用CD等の通信販売事業等

レコードメーカー、インターネット専門の通信販売事業者に加え、実店舗を有するレコード販売業者も、消費者の購入利便性の向上、商品選択肢の多様化のため、インターネットを利用した音楽用CD等の通信販売事業を積極的に展開している。

(2) 音楽配信事業

日本レコード協会では、2005年から音楽配信市場の周知のため、統計データの収集と公表(四半期毎)を開始した。2023年の音楽配信売上は約1,165億円(前年比111%)と、ストリーミングの伸長により10年連続成長し過去最高額を更新した。CDの生産実績と音楽配信実績の比率については、年々音楽配信実績の比率が上昇しており、2023年のパッケージ生産実績対音楽配信実績は65.5対34.5となり、年々音楽配信の占める割合が増加傾向にある。

また、書店、ホームセンター、駅、雑貨店、アパレル、映画館、高速道路SA等の異業種の販売ルートの開拓も継続して積極的に行われており、消費者の音楽へのアクセス環境の拡大、整備に努めている。

6.円滑・合理的な流通を図るための取引関係の明確化・透明化その他取引慣行上の弊害の是正
取引関係に関する特段の弊害は現在ないと認識している。

7.その他
(1) CD音源の無料試聴サービス

インターネットの普及拡大に伴い、レコードメーカー各社は自社のWEBサイトを利用して、プロモーションを目的にCD音源の無料試聴サービスを実施している。
また、販売店においても、デジタル試聴機が導入されており、現在118店に、据え置き筐体型、タブレット型等262端末が設置されている(2023年12月現在)。CDパッケージのバーコードを試聴機のリーダーにかざすことにより、約420万曲がストリーミングにより試聴可能となっている。ECサイトにおいては13サイトが試聴サービスを実施しており、消費者の利便性が図られている。なお、有料音楽配信サイトでも配信音源の無料試聴サービスを実施している。

(2) 販売店のPOSシステム支援用として、商品カタログのテキストデータの提供(契約会社に対する有料サービス「れこーどばん」)を行ってきたが、2001年9月からは、「れこーどばん」に各商品の収録曲目を追加する等、より充実した内容のデータ提供を可能とした「eCATS」(注)のサービスを行っており、現在は販売店のみならず、ECサイトや放送局向け事業者にも利用されている。
:「eCATS(eCATS = entertainment catalog service)」は、当協会加盟レコードメーカーの賛同、協力を得て設立された「株式会社ジャパンミュージックデータ」(jmd)(資本金・1億円、2000年6月1日設立)が開発・運用しており、jmdは「デジタル試聴音源データベース」「音楽権利情報検索ナビ」などの開発・運用も行っている。
(3) レコードメーカーが共同で受注・物流会社を設立しており、従前から、効率的・合理的に物流業務を行っている。また、販売店からの注文に対しては、原則として注文日の翌日に全国のレコード店に配達する配送システムが構築されている。