プレスリリース
私的録音録画補償金の新たな対象機器の指定について
2022.09.09
日本レコード協会
2022 年 8 月 23 日、文化庁より、私的録音録画補償金の新たな対象機器としてブルーレイディスクレコーダーを指定する著作権法施行令の改正案が示されました。
(https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/93752701.html)
今回の指定は、音楽や映像のクリエーターに適切な対価を還元する環境を再構築するために必要不可欠なプロセスであり、私たちはこの改正案を強く支持します。
音楽や映像を生み出す立場にある者にとって、自ら努力して生み出した作品を多くの方々に楽しんでいただけることは大きな喜びです。日本では著作権法上、これらの作品をコピーして個人や家庭内で楽しむことが法律で認められていますが、デジタル機器によるコピーについては、元の作品と同じ品質の複製を生み出すという特徴があります。いくら「私的な楽しみ」だとはいえ、オリジナルとまったく等価な複製が世の中に数多く生まれることは、クリエーターが本来得られるはずだった利益に大きな影響を及ぼすことになります。その問題を解決するため、「私的録音録画補償金制度」はデジタル機器による私的なコピーについて、クリエーターに補償金を還元することにより、「私的な楽しみ」と「クリエーターの利益」との調和を図るために設けられているもので、フランス、イタリア、ドイツをはじめとしたヨーロッパ各国においても同様の制度が設けられています。
我が国の制度は 1992 年にスタートし、コピーに使用される機器やメディアの販売時に徴収された補償金が、作品に関わる様々な権利者のカテゴリーに応じた各種のデータや調査結果等に基づいて適切かつ合理的に分配されるしくみが確立し、次の創造活動に繋がっていく好循環を生んできました。しかし技術の進化に伴ってコピーに利用される機器等が変化してきた中で、主流となってきた多機能機器等がヨーロッパ各国のように制度の対象に指定(※別表をご参照ください)されてこなかった結果、制度自体は存続していながら、補償金がほぼゼロに近くなったまま、すでに10年以上の歳月が経過しています。「私的な楽しみ」と、「クリエーターの利益」のバランスは、大きく崩れたままです。
こうした状況に対してわれわれ権利者団体は、審議会等の場を通じて、一貫してより実態に即した形に制度を改善するように訴え続けてきましたが、一向に進展が見られませんでした。
2019 年、長期にわたる関係当事者間の協議で結論が得られなかったことから、この問題の検討は、制度を所管する文化庁と、電機産業を代表する立場の経産省と、放送や通信を所管する総務省と、内閣府の知財本部の 4 府省庁間の協議に委ねられることになりました。 4 府省庁では、再度実態調査を実施するなどして検討を重ねた結果、現行制度の対象機器として新たにブルーレイレコーダーを指定する方針を決め、関係当事者に対する説明と意見聴取を経たのちに今回の発表となりました。極めて透明なプロセスだと考えます。
かつて私的録画補償金の対象機器については、平成23年の知的財産高等裁判所の判決において、アナログチューナーを搭載しない録画機器が著作権法施行令で規定するものに該当するかどうかが争われましたが、今回の著作権法施行令改正により、対象機器となることが明確になります。
また地上放送を録画しようとする場合、ダビング 10 という著作権保護技術が働きますが、従前のコピーワンスからダビング 10 へとコピー回数を拡大(1 回から 10 回)することが検討された際に、権利者が拡大に同意した背景には、私的録画補償金制度の存在がありました。
実態調査の結果によれば、ユーザーが行うコピーは2回までが大半を占めており、10回という回数は、ユーザーのニーズを過度に制限するような数字ではありません。むしろ、私的な規模や領域を超えてまでコピーが拡散することを抑止しているにすぎず、その範囲で行えるコピーに対する対価の還元の必要性がなくなるわけでもありません。
今回の指定により徴収される補償金の額については、これまでの例によれば機器の出荷価格の1%程度であり、平均してレコーダー1台で数百円、ディスク1枚で数円程度になると考えられます。具体的な補償⾦の徴収は、文化庁⻑官から認可を受けてから行われることになりますが、補償金は、機器等を購入するときにあくまでも1回だけお支払いいただく仕組みとなっており、それまでに購入された機器について補償金が徴収されることもありません。
今回の指定は、クリエーターへの対価の還元が果たされないまま放置され続けてきたアンバランスな状態を改善へと舵を切ることを意味するものであり、必ず実現させる必要があります。その一方で、これまでの経緯を振り返れば、現行の私的録音録画補償金制度は、クリエーターに対価を還元していくための実効性からみれば、たしかに時代遅れで不完全な制度と言わざるを得ません。ただ、制度がどれだけ時代遅れで不完全だったとしても、クリエーターへの対価の還元の必要性がなくなるわけではありません。
われわれ19団体は、改組された私的録音録画補償金管理協会に協力して、新たな機器の指定に対応した補償金の管理を適正に進める体制を整えるとともに、インターネットを介したコンテンツ流通が主流となりつつあるいま、現行制度の在り方を含めて、新しい時代に即した対価還元の仕組みづくりの議論に、積極的に貢献していく所存です。
2022 年 9 月 9 日
一般社団法人 映像コンテンツ権利処理機構
理事長 瀧 藤 雅 朝
一般社団法人 映像実演権利者合同機構
代表理事 小 野 伸 一
一般社団法人 演奏家権利処理合同機構MPN
理事長 椎 名 和 夫
一般社団法人 全日本テレビ番組製作社連盟
理事長 福 浦 与 一
協同組合 日本映画製作者協会
代表理事 新 藤 次 郎
一般社団法人 日本映画製作者連盟
会長 島 谷 能 成
一般社団法人 日本映像ソフト協会
会長 吉 村 隆
一般社団法人 日本音楽作家団体協議会
会長 石 原 信 一
一般社団法人 日本音楽事業者協会
会長 瀧 藤 雅 朝
一般社団法人 日本音楽出版社協会
会長 稲 葉 豊
一般社団法人 日本音楽制作者連盟
理事長 野 村 達 矢
一般社団法人 日本音楽著作権協会
理事長 伊 澤 一 雅
協同組合 日本脚本家連盟
理事長 鎌 田 敏 夫
公益社団法人 日本芸能実演家団体協議会
会長 野 村 萬
協同組合 日本シナリオ作家協会
理事長 佐 伯 俊 道
一般社団法人 日本動画協会
理事長 石 川 和 子
公益社団法人 日本文藝家協会
理事長 林 真 理 子
一般社団法人 日本民間放送連盟
会長 遠 藤 龍 之 介
一般社団法人 日本レコード協会
会長 村 松 俊 亮
(五十音順)
【別表】
ヨーロッパ各国における多機能機器等の指定状況 | |
パソコン | オーストリア、クロアチア、チェコ、ドイツ、イタリア、ラトビア、リトアニア、オランダ、ポーランド、ポルトガル、スロバキア、スウェーデン、ウクライナ(CD/DVD-RWドライブ付) |
タブレット | オーストリア、ベルギー、クロアチア、フランス、ドイツ、ハンガリー、イタリア、オランダ、ポルトガル、スロバキア、スウェーデン、スイス、ウクライナ |
携帯電話スマートフォン | オーストリア、ベルギー、クロアチア、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、リトアニア、オランダ、ポルトガル、スロバキア、スウェーデン、スイス、ウクライナ |
スマートウォッチ | オーストリア |
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otoiawase@ac.wakwak.com
以上